「もっと球速を上げたい」
「もっと投げ込んだほうがいい?」
中学生ピッチャーを指導していると、こうした相談をよく考えることがあります。
私自身、中学11年・高校13年、24年間野球の指導に携わってきました。
その経験から感じるのは、ピッチャーにとって大切なのは、単純に「たくさん投げること」ではないということです。
大切なのは、
どれくらい投げるかだけではなく、どんな状態で、どんな投球をするか。
今回は、中学生ピッチャーの練習量について、指導者として大切だと感じている考え方を紹介します。
※成長期の選手は個人差が大きいため、以下は一般的な考え方です。肩や肘などに痛みがある場合は、投球を続けず、指導者や医療専門職に相談してください。
中学生ピッチャーは「投げれば投げるほど上手くなる」わけではない
球速を上げたい。
コントロールを良くしたい。
試合で抑えたい。
そう考えると、どうしても投球量を増やしたくなります。
しかし、
投球量を増やすこと=必ず上達すること
ではありません。
疲労がたまった状態で投げ続けると、フォームが崩れることもあります。
さらに、肩や肘などに負担がかかる可能性もあります。
だから私は、
「たくさん投げる」より「質の高い投球を継続する」
という考え方を大切にしています。
① 毎日100%の力で投げない
中学生の自主練習で注意したいのが、
毎日全力投球すること。
球速を測るのが楽しくなって、
「今日は何km/h出た!」
と毎日最高出力で投げたくなる気持ちは分かります。
しかし、毎回100%の力を出す必要はありません。
フォーム確認の日は軽め。
身体を動かす日。
実戦を意識する日。
そうやって練習に強弱をつけることも大切です。
② 「球数」だけではなく身体の状態を見る
練習量を考えるとき、
「今日は何球投げた?」
だけを見るのではなく、
「今日の身体はどうだった?」
を確認してほしいと思います。
例えば、
- 肩が重い
- 肘に違和感がある
- 腕が振りにくい
- 下半身が疲れている
- いつもよりコントロールが悪い
- 明らかにフォームが崩れている
こうした変化がある場合は、投球量を増やすより、休養や練習内容の調整を考えることが大切です。
③ 痛みがあるときは「根性」で投げない
これは特に大切です。
「少し痛いけど、あと10球だけ」
「試合が近いから投げる」
という考え方は避けたいところです。
中学生は成長期です。
肩や肘などに痛みがある場合は、
痛みを我慢して投げ続けることより、原因を確認すること
を優先してください。
特に投球時の肩・肘の痛みが続く場合や、投球後も痛みが残る場合は、早めに指導者や医療機関に相談しましょう。
④ 練習の「目的」を変える
毎回同じように投げる必要もありません。
例えば自主練習なら、
フォーム確認
軽いキャッチボールなどで身体の使い方を確認する。
コントロール練習
ストライクゾーンを意識して投げる。
球速を意識する練習
十分に身体を動かしたうえで、限られた投球だけ強度を上げる。
実戦練習
打者を想定して投げる。
このように、
「今日は何を身につける練習なのか」
を決めておくと、無駄な投球を減らしやすくなります。
⑤ 球速アップ=投げ込みではない
「球速を上げるなら、とにかく投げ込む」
と考える選手もいます。
しかし、球速には、
- 下半身
- 股関節
- 体重移動
- 体幹
- 上半身
- 投球フォーム
- タイミング
- 身体全体の連動
など、さまざまな要素が関係します。
だから、
球速を上げたいから投球量を増やす
だけではなく、
身体の使い方を良くする練習
も大切です。
前の記事で紹介した、
「自宅10分」
「グラウンド20分」
のような練習も、その考え方の一つです。
⑥ 練習後の回復も「練習」の一部
意外と忘れられやすいのが休養です。
練習したら、
身体が回復する時間
も必要です。
特に成長期の中学生は、
- 睡眠
- 食事
- 水分
- 休養
なども大切にしたいところです。
「練習時間を増やすこと」だけを考えるのではなく、
練習→回復→成長
というサイクルを考えてみてください。
⑦ 保護者の方も「もっと投げなさい」と言いすぎない
これは保護者の方にも伝えたいことです。
子どもが、
「今日はもっと投げたい」
と言うこともあるでしょう。
逆に、
「今日は疲れた」
と言うこともあります。
そんなとき、
「もっと練習しないと上手くならないよ」
と投球量を増やす方向だけに持っていくのではなく、
身体の状態を一緒に考えてあげる
ことも大切です。
特に肩や肘の痛みについては、
「みんな投げているから大丈夫」
と考えないこと。
子ども本人の状態を見ることが重要です。
では、どれくらい投げればいいの?
ここが一番気になるところだと思います。
ただ、「中学生は1日○球なら安全」と一律に決めるのは適切ではありません。
年齢、成長段階、体格、投球強度、試合数、練習内容、休養状況などによって負担は変わります。
そのため、
球数だけでなく、投球強度・連投・休養・痛みの有無などを合わせて考える
ことが大切です。
チームの指導者や医療専門職と相談しながら、その選手に合った投球量を決めていきましょう。
私が24年間の指導で大切だと感じること
中学生の時期は、目の前の結果だけを追いかける時期ではありません。
もちろん、
「速い球を投げたい」
「試合で活躍したい」
という気持ちは大切です。
でも、
中学生でどれだけ投げたかより、高校生になったときにどんなピッチャーになっているか。
私はこちらも大切だと考えています。
今125km/hの選手が、130km/hを目指す。
それ自体は素晴らしい目標です。
ただし、そのために身体を無理に追い込んでしまっては意味がありません。
焦らず、身体の成長とともにレベルアップしていきましょう。
まとめ
中学生ピッチャーの練習量を考えるときに大切なのは、
- 投げれば投げるほど上達するわけではない
- 毎日100%で投げない
- 球数だけでなく身体の状態を見る
- 痛みを我慢して投げない
- 練習ごとに目的を決める
- 球速アップには身体の使い方も重要
- 睡眠・食事・休養も大切
- 選手一人ひとりに合わせて考える
ということです。
「もっと投げる」ではなく、「どうすれば長く良い投手でいられるか」。
この視点を持って、中学生のピッチャーを育てていきたいと思っています。


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