「もっと速い球を投げたい」
中学生のピッチャーなら、誰もが一度は思うことではないでしょうか。
120km/hを超えたい。
125km/hを出したい。
130km/hを目指したい。
目標を持つことは、とても大切です。
ただし、球速を上げるためには、ただ強く投げればいいわけではありません。
私は中学11年、高校13年、合わせて24年間、野球の現場で選手を見てきました。
その経験から感じるのは、
「球速を上げる練習」と「身体を壊さずに球速を上げる練習」はセットで考える必要がある
ということです。
今回は、中学生ピッチャーが球速を伸ばしていくために大切なことと、注意したい練習について書きます。
① まず「腕を速く振る」だけでは球速は上がらない
球速を上げたいと思うと、
「もっと腕を振れ!」
と言われることがあります。
確かに腕の振りは重要です。
しかし、腕だけで強く投げようとすると、肩や肘に負担が集中する可能性があります。
ピッチングは、
下半身 → 股関節 → 体幹 → 上半身 → 腕 → ボール
というように、身体全体を連動させて行う動作です。
もちろん選手によってフォームは違います。
だから、
「全員このフォームにすれば球速が上がる」
というものではありません。
大切なのは、
自分の身体を効率よく使ってボールに力を伝えること。
これを意識してほしいと思います。
② 下半身を使えるピッチャーを目指す
球速アップを考えるとき、腕ばかりに目が行きます。
しかし、下半身の使い方は非常に重要です。
例えば、
- 股関節を使う
- 軸足でしっかり立つ
- 体重移動をスムーズにする
- 着地後に身体を前へ運ぶ
- 上半身と下半身を連動させる
といった部分です。
ただし、
「下半身を使え!」と言われても、中学生には具体的に分かりにくい
こともあります。
だからこそ、指導者は選手の動きを見ながら、
「どこが動いていないのか」
を具体的に伝える必要があります。
③ 体幹は「腹筋だけ」ではない
「球速を上げるには体幹トレーニング」
という話を聞くことがあります。
これは間違いではありません。
ただ、体幹トレーニングをたくさんやれば球速が上がる、という単純な話でもありません。
ピッチングでは、
身体を安定させながら、必要なところを動かす能力
が重要です。
ただ固めるだけではなく、
「動ける体幹」
を作ることを意識したいところです。
④ 中学生は「筋力」だけを追いすぎない
筋力をつけること自体は悪いことではありません。
成長期の選手にとって、適切なトレーニングは身体づくりの大切な要素です。
ただし、
「筋肉をつければ球速が上がる」
と単純に考えるのは危険です。
大切なのは、
筋力 × 身体の使い方 × 技術 × 成長
です。
中学生は身体が大きく変化する時期でもあります。
だからこそ、目先の球速だけを追いかけるのではなく、長期的に身体を作っていくことが大切です。
⑤ 「毎日全力投球」は球速アップにつながるとは限らない
ここは特に注意してほしいところです。
「球速を上げたいから毎日全力投球する」
という練習を続ける。
一見すると、努力しているように見えます。
しかし、投球は肩や肘などに大きな負荷がかかります。
疲労が残った状態で無理に投げ続ければ、フォームが崩れたり、故障につながったりする可能性があります。
休むこともトレーニングの一部です。
痛みや違和感がある場合は、無理に投げ続けず、指導者や医療専門職に相談することが大切です。
やってはいけない練習①
痛みを我慢して投げ続ける
これは絶対に避けたいところです。
「これくらいなら大丈夫」
「試合があるから」
「みんな投げているから」
と我慢してしまう選手がいます。
しかし、肩や肘の痛みを抱えながら投げ続けることは、将来的な故障につながる可能性があります。
特に成長期の中学生は、身体が大人とは違います。
痛みを我慢することを「根性」と考えない。
これは選手にも保護者にも伝えたいことです。
やってはいけない練習②
球速だけを毎回測って一喜一憂する
スピードガンで球速を測ることは、選手のモチベーションになります。
「今日は124km/hだった!」
「125km/h出た!」
これは嬉しいですよね。
ただ、毎回の数字だけを気にしてしまうと、
「今日は球速が落ちた」
「フォームが悪い」
と必要以上に悩んでしまいます。
球速は、
- 疲労
- 気温
- マウンド
- コンディション
- 投球数
- 測定条件
などでも変わります。
だから、
1km/h、2km/hの変化だけで選手の成長を判断しない
ことも大切です。
やってはいけない練習③
無理に身体を大きくしようとする
「身体が大きいほうが速い球を投げられる」
これは一面ではあります。
しかし、中学生の身体は成長途中です。
無理な増量や食事をすればいいわけではありません。
成長期に必要な栄養をしっかり摂り、十分な睡眠を確保する。
そして、その選手自身の成長に合わせて身体を作っていく。
これが基本です。
では、何をすればいいのか?
私が中学生ピッチャーに伝えたいのは、
「今すぐ130km/hを出すこと」だけを目標にしない
ということです。
まず、
① 正しい身体の使い方を覚える
↓
② 下半身と体幹を使えるようにする
↓
③ 投球フォームを安定させる
↓
④ 適切なトレーニングで身体を作る
↓
⑤ 十分に休む
↓
⑥ 少しずつ球速を伸ばしていく
この流れです。
125km/hのピッチャーが130km/hを目指すなら
例えば現在125km/h前後を投げられる中学生がいるとします。
この段階になると、
「とにかく力をつければいい」
とは限りません。
むしろ、
今の投球フォームの中にある「無駄」を探す
ことが重要になってきます。
例えば、
- 助走から着地までの動き
- 軸足の使い方
- 股関節の動き
- 骨盤の動き
- 上半身の開き
- リリース位置
- 腕の振り
- フィニッシュ
などを一つずつ確認します。
小さな改善が積み重なって、結果的に球速につながることがあります。
球速アップで一番大切なのは「焦らないこと」
中学生の時期は、選手によって成長のスピードが大きく違います。
今120km/hの選手が高校で大きく伸びることもあります。
逆に、中学生の時点で速い球を投げていても、高校で伸び悩むこともあります。
だから、
中学生の球速=その選手の最終的な球速
ではありません。
高校生になって身体が大きくなったとき、
「もっと速い球を投げられる身体」
を作っておく。
これも中学生の大切な仕事だと思っています。
まとめ
中学生ピッチャーが球速を上げるために大切なのは、
- 腕だけで投げない
- 下半身を使う
- 身体全体を連動させる
- 適切なトレーニングをする
- 睡眠と休養を大切にする
- 痛みを我慢しない
- 球速の数字だけで成長を判断しない
- 長期的に身体を作る
ということです。
球速アップは、一日でできるものではありません。
でも、
正しい方向で努力を続ければ、今より速い球を投げられる可能性はあります。
私は24年間、野球の現場でたくさんの選手を見てきました。
中学生のときに身体が小さかった選手が、高校で身体が大きくなり、球速を大きく伸ばした姿も見てきました。
だからこそ、中学生の選手には、
「今の自分の限界」ではなく「これからどこまで伸びるか」
を大切にしてほしいと思っています。
このブログでは、これからもピッチャー育成について、現場で感じてきたことを本音で発信していきます。
次回予告
次はさらに具体的に、
「中学生ピッチャーが自宅でできる球速アップトレーニング10分」
を書きます。
器具をたくさん使わず、** 自宅で10分程度でできるメニュー**を中心に紹介します。


コメント