はじめに
ピッチャーは、野球の中でも特に精神的な負担が大きいポジションだと思います。
打たれれば失点につながる。
四球を出せばピンチになる。
ミスが続けば、自分を責めてしまうこともあります。
そんなとき、指導者がどんな言葉をかけるのか。
これは、ピッチャーのその後のプレーにも大きく関わります。
私は中学野球11年、高校野球13年、合わせて24年間、野球の指導現場で選手たちと向き合ってきました。
その経験から、今回はピッチャーへの声かけで大切にしたい5つのポイントを紹介します。
① 打たれた直後に責めない
ピッチャーが打たれたとき、指導者も悔しいものです。
しかし、
「なんでそんな球を投げたんだ」
「何やってるんだ」
と責めても、次の一球が良くなるとは限りません。
特にピッチャーは、打たれたことで本人が一番分かっていることも多いです。
そんなときは、
「次の一球に集中しよう」
という言葉だけでも十分な場合があります。
大切なのは、打たれたことをいつまでも引きずらせないこと。
ピッチャーにとっては、次の一球を投げることが最も重要だからです。
② ミスしたときこそ落ち着かせる
四球を出した。
エラーがあった。
ボークをしてしまった。
そんなとき、ピッチャーの頭の中は一気に不安になります。
「また打たれるかもしれない」
「次もストライクが入らなかったらどうしよう」
そうなると、身体にも力が入りやすくなります。
だから指導者は、
「一回落ち着こう」
「まだアウトは取れる」
「次の一球だけ考えよう」
など、気持ちを切り替えられる言葉をかけることが大切です。
③ 技術だけではなく「良かったところ」を伝える
ピッチャーの指導では、悪かったところばかりに目が行きます。
「腕が下がった」
「開きが早い」
「コントロールが悪い」
もちろん、修正することは必要です。
しかし、それだけでは選手が自信を失ってしまうことがあります。
例えば、
「今のストレートは良かった」
「今のフォームは安定していた」
「低めに投げられていた」
など、良かった部分も伝える。
そして、
「そこはそのままで、ここだけ修正しよう」
と伝える。
全部を否定するのではなく、良い部分を残しながら修正する。
これはピッチャーを育てるうえで大切だと思います。
④ 「次はどうする?」と本人に考えさせる
指導者が、
「次は外角に投げろ」
「変化球を使え」
とすべて指示することもできます。
しかし、長い目で見ると、ピッチャー自身が考えることも大切です。
例えば、
「今の打者、どうだった?」
「どの球が良かった?」
「次はどう攻めたい?」
と聞いてみる。
最初は答えられないかもしれません。
それでも少しずつ、自分で考えるようになります。
ピッチャーは試合中、自分で判断しなければならない場面がたくさんあります。
だからこそ、
「自分で考えて投げるピッチャー」
を育てることが大切だと思っています。
⑤ 調子が悪い日にも「信じている」と伝える
ピッチャーには、どうしても調子の悪い日があります。
ボールが走らない。
ストライクが入らない。
変化球が決まらない。
そんな日は誰にでもあります。
そこで、
「今日はダメだな」
という雰囲気を指導者が出してしまうと、選手はさらに苦しくなります。
そんなときこそ、
「今日はこういう日もある」
「できることをやろう」
「自分のピッチングをしよう」
と声をかける。
そして何より、
「お前ならできる」
と、指導者が選手を信じる姿勢を見せることが大切だと思います。
ピッチャーには「言葉」だけではなく「表情」も伝わる
指導者が何を言ったかだけではありません。
表情や態度も選手には伝わります。
「大丈夫」と言いながら、指導者が不安そうな顔をしていたら、選手も不安になるかもしれません。
逆に、苦しい場面でも指導者が落ち着いていれば、選手も落ち着きを取り戻しやすくなります。
だからこそ、
ピッチャーが苦しいときほど、指導者が冷静でいる。
これも大切なことだと思います。
中学生と高校生では声かけも変える
中学生のピッチャーには、技術だけではなく、野球を続けていくための土台を作ることも大切です。
失敗しても、
「次にどうすればいいか」
を一緒に考えてあげる。
高校生になると、少しずつ本人に判断を任せる場面も増やしていく。
「どうしたい?」
「今の打者をどう見る?」
と、本人の考えを引き出す。
もちろん、選手によって成長段階は違います。
だからこそ、年齢だけで決めるのではなく、その選手を見て声をかけることが重要です。
まとめ
ピッチャーへの声かけで大切にしたいポイントは、
- 打たれた直後に責めない
- ミスしたときこそ落ち着かせる
- 良かったところを伝える
- 「次はどうする?」と本人に考えさせる
- 調子が悪い日にも選手を信じる
という5つです。
ピッチャーは、失敗が目立つポジションです。
だからこそ、指導者の言葉が大きな意味を持つことがあります。
厳しく指導する場面もあります。
技術を修正しなければならない場面もあります。
でも、
「この指導者は自分のことを見てくれている」
と選手が感じられること。
それが、ピッチャーが思い切って腕を振り、失敗を恐れず成長していくための土台になるのではないでしょうか。
24年間指導してきた私自身も、ピッチャーへの声かけについては、今でも考えさせられることがあります。
これからも選手の表情を見ながら、その選手に必要な言葉をかけられる指導者でありたいと思います。
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